地方の測量技術者がAI時代の技術革新を理解するために、GeoAIに関する技術力の向上を目指す
NPO法人全国G空間情報技術研究会理事長 碓井照子
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日本におけるAIの爆発的な民間利用は、chatGPTの商用利用がはじまった2021年以降であるといわれている。一方、測量・地図作成分野では、図1に示したように、10年以上前から空中写真や衛星画像、ライダー点群データなどを活用して地物の変化箇所の抽出や地物判読にAIが活用されてきた。そして、新しく、GeoAIという研究分野が、ChatGPTと同様に2020年代に急速に日本でも注目されるようになった。GeoAIの研究は2010年ごろから研究発表論文数が増加するが、その世界的な普及は2020年代に入ってからといわれている。日本のGIS学会にGeoAI分科会が設置されたのは2023年であり、代表者は慶應義塾大学環境情報学部の厳網林教授である。 GeoAIとGIS、単なるAI活用とは何が異なるのであろうか。2025年11月19日のWebセミナーで、この問題を中心に、AI時代の測量技術者に必要な技術は何かを考えてみることにした。 米国や中国、ヨーロッパに比べ、日本ではAIの研究開発や民間活用が遅れているといわれるが、2025年6月4日に、AI新法(人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律)が制定され。同年12月19日には、「AI基本計画」が正式に閣議決定された。2026年以降、日本でもAIの普及・開発を重点的に行うためである。 このような社会的背景を受け、2025年11月19日の全国G空間情報技術研究会のWebセミナーでは、慶應義塾大学環境情報学部の厳網林教授に「GeoAIの基礎と測量における応用」、国土地理院基本図情報部地図情報技術開発室の野口真弓氏に「電子国土基本図の整備・更新におけるAI活用の検討」、NPO会員企業の山形測量の宮本直之氏からは「測量設計業におけるAIの活用―補助金申請業務効率化と採択率向上の実践事例―」の講演をしていただいた。 厳網林教授は、GIS学会の前会長でもあり日本のGeoAI研究を牽引されている著名な研究者で、私とは30年以上前からGIS研究で交流がある。また、GISだけでなく測量にも造詣が深く、「GeoAIの基礎と測量の関係」について講演をお願いした。 |
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実世界のビッグデータの80%以上は位置情報を有しており、AIが現状分析をするためにはGISの地理空間情報処理を技術的に理解し、活用することが必要である。そのためには、地理空間のデジタル化つまり3次元の電子国土とその更新が不可欠であり、災害や都市問題、農業問題などを人間が解決するためには、GeoAIを理解し、活用することが必要になると強調された。つまり、少し難しいが、図2に示したようにGIS for AIとAI for GISの重複個所にGeoAIが存在している。 国土地理院の野口真弓様には、「電子国土基本図の整備・更新におけるAIの活用」を講演していただいた。ベースレジストリーである電子国土基本図の3次元化に国土地理院が着手していること、高分解衛星データにAIを活用した地物情報の自動変化情報抽出がかなり、実用化段階まで進んでいることが示された。次に、株式会社山形測量の宮本直之様からは、ChatGPTを活用した測量申請業務への効率化についての講演があった。 |
今回の講習会後の会員の感想文からは、GeoAIに関する興味がかなり増大し、業務で実際にGeoAIを活用している企業はなかったが、今後活用したいという意見が多く述べられていた。 最後に、ChatGPTに電子国土の3次元化の社会的意義について聞いてみると「3次元で国土の見た目をよくする「国土の立体化」ではなく、AIが理解できる国土を作ることを意味し、電子国土3次元化は、GeoAI時代の基盤」という答えが返ってきた。また、「測量企業はGeoAI時代に何をすべきか」と問うてみると「これまでは、正確に測る、図面・地図を納品するであったが」、これからは、「AIが判断できる形でデータを提供するだけでなく、行政・企業・市民の意思決定を支援する企業へと変化する」という答えが返ってきた。AIの答えは、人により異なるケースも多いが、GeoAIを理解し、使いこなすことの重要性は、明示されたといえる。 |
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「GIS NEXT 第94号 掲載記事より」