NPO活動20年を経て、次のステージへ

NPO活動20年を経て、次のステージへ

NPO法人全国G空間情報技術研究会 専務理事  宮島 四郎         

サテライト計画

 1998年に測量業界でGISの必要性を訴え、組織化を目標として当研究会の活動を開始する時に掲げたのがサテライト計画です(図1)。 1999年に北海道GIS技術研究会が設立され、全国で組織化を開始しました。

 また、この計画の初期には、当時国土地理院で企画部GIS推進室長をされていた村上広史氏(現青山学院大学教授)に相談しました。これからGISを推進する活動をするのであれば産、学、官三位一体で推進するのが良いと助言いただきました。そして、学で支援いただくのであればと当時奈良大学教授の碓井照子先生の名前を教えていただきました。2001年4月にはじめて大学の碓井研究室に訪ねた時に、このサテライト計画をお話し、全国を縦断するセミナーをお願いしました。そして、碓井先生がGISシステム学会会長に就任された2002年に全国6都市で夏休み期間を使い2週間で全国を縦断する強行軍の全国縦断セミナーを実施しました。この全国縦断セミナーは以降8年に亘り継続され、全国主要都市40か所以上で延べ1万人を集客しました。

 この間、2003年12月には、関西地区が6番目の組織として設立されたのを機に、全国6地区での任意団体の組織をNPO法人として1本に束ねて申請し、NPO法人全国GIS技術研究会(2017年6月に現在の名称に改称)が発足しています。

碓井理事長誕生

 碓井先生は2017年4月に奈良大学を退職され、6月から当研究会の理事長に就任しました。地方でのGIS技術者の育成と地方経済をGIS産業で活性化させることを方針として掲げ、全国の6支部をGISシステム学会賛助会員に登録して、若手技術者にGIS上級技術者の資格取得を推奨してきました。また、当研究会の活動に各支部から技術者を招集した技術委員会の活性化に尽力していただきました。その成果として2012年「製品仕様書読み方・書き方」(図2)を出版しました。

そして、全国で各県測量協会からの要請でこれを教材として講習会を実施し、全国で実測技術者700人以上に参加いただきました。

国土地理院長からの感謝状を受領

 2014年6月には「測量の日」における功労者感謝状を授与されました。これは、長年GISの普及啓発活動を全国各地区で実施してきた実績が評価されたものであり、碓井理事長以下各支部の幹部が一堂に会して受賞を喜びました。

コロナ禍で得た新たな活動手段

 コロナの感染流行の際には当研究会の活動も制限されました。セミナーの企画も出来ずに自粛を余儀なくされていました。そこで、ZOOMを使うネット講習会を企画しました。当初は戸惑いもありましたが、段々慣れてくると今迄の集合教育よりコストと時間の有効活用が認識されて、実施の回数も増えて来ています。また、測量系CPD協議会の18番目の構成団体として認定されました。独自に学習プログラムを設定してポイント付与も可能になったため、会員企業の技術者の資格更新に役立つことにもなり、登録者も増えています。

 今期からは、碓井理事長が「リスキリング」の重要性を強く打ち出したことから、新たな仕事の可能性として、例えば「地図調整」や「測量成果検定」の知識も組み込んだZOOM研修会を実施する計画です。

次のステージは、災害対応と防災減災に向けた地域活動

 今年元旦に発生した能登半島地震は多くの犠牲者を出すとともに過疎地における災害対応の難しさを明らかにしました。残念ながら半年を経過した現在も復旧が順調とは決して言えない状況です。ICTの活用がますます求められる時代にあって、災害対応、そして将来の災害に備える取り組みを当研究会の活動として行う時が到来したと考えています。実際、会員企業からは、地元の自治体からの要請で災害時を想定したシステムを構築して稼働させたり、災害時の被害情報の取得にドローンを使ったりした実例の報告が多く寄せられています。これらを会員同士で共有して、地元の災害活動に貢献することこそが当研究会の使命と考えます。

 今年8月、東京豊洲で全国大会を開催します。今回の研修テーマは災害に対処する知識習得とし、専門家による講演と会員企業からの災害対応の事例発表を企画しています。当研究会の活動も20年を経て新たな役割が見えてきました、次の20年に向けて邁進してまいります。

 

 

     

 

 

「GIS NEXT    第88号  掲載記事より」