災害時下水道損壊現地調査にスマホとGISの連携を-仙台市下水道合同防災訓練-
NPO法人全国G空間情報技術研究会理事長 碓井照子
能登半島地震では、上下水道の復旧が遅れ、3か月が経った今でも復旧作業は停滞している。特に能登半島の中山間地域は過疎地域であり地方自治体の財政基盤は弱く、上下水道のデジタル化が遅れていたこともその一つの要因と考えられる。 令和6年4月1日より、上下水道行政が60年ぶりに一元化され、国土交通省が所管することになった。従来から下水道は国土交通省、上水道は厚生労働省であったが、これからは国土交通省が一括して管轄し、災害時などには、道路損壊箇所の復旧とも連携して現在よりもスムーズに損壊箇所の復旧作業が進むことになる。また、インフラ分野のDXが更に進むと考えられ、従来にも増して下水道GISや上水道GISが急速に普及するであろう。 下水道GISに関しては、NPO全国G空間情報技術研究会の会員企業が、PC-Mappingを活用して一定の成果を挙げてきた。中でも下水道システムの標準化に貢献しただけでなく、東日本大震災では多大な実績をあげた仙台市の佐野コンサルタンツ株式会社(全国G空間情報技術研究会会員企業)の活動は有名である。東日本大震災の直後、地理情報標準準拠で作成された仙台市下水道GISのデータを活用して、被害箇所の効率的な現地調査を支援し、被害実態調査と同時に仙台市下水道GISのデータベースを更新した。GIS学会認定のGIS上級技術者を有しGIS技術力がある地元企業ならではの活躍である。 |
また、NPO全国G空間情報技術研究会東北支部は、「災害時における下水道管路施設の被災状況調査に関する協定」を令和3年1月6日に締結した協定に基づき令和5年度は令和5年11月29日に「 仙台市下水道合同防災訓練」を実施した。 仙台市は東日本大震災以降の平成25 年3月に仙台市地域防災計画の運用版として「仙台市下水道BCP〔地震・津波編〕」を策定した。恒常的な訓練等によるBCPの定着及び内容の維持改善の一環として、管路の実地訓練を毎年実施している。 |
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令和4年度までの訓練では震災調査当時の手法で行ってきたが、各班(全14班)の1日調査分をGISに入力するのに2時間程度要し、全調査結果の把握は翌日となっていた。(図1) 令和5年度の訓練では当年度に公開が始まった下水道閲覧システム(インターネット版)をベースに現場での入力作業をリアルタイムにスマホで入力と表示を可能とする下水道調査システム(クラウド版)を開発し訓練調査を実施した。(図2) |
当日の活動は、建設新聞(令和5年12月5日付)に掲載された。 インターネット版システムの開発にあたっては、全国G空間情報技術研究会技術委員会で研究が進められているUNVT(国連ベクトルタイルツールキット)を中心とするWebGIS技術の研究成果が活用され、GISのクラウド化が有用であることが実証された形となり今後の更なる研修成果に期待したい。 |
「GIS NEXT 第87号 掲載記事より」