2024年度NPO全国G空間情報技術研究会の飛躍的な活動に向けて
NPO法人全国G空間情報技術研究会理事長 碓井照子
昨年の11月9日、東京有明青海地区のタイム24で、第18回全国大会を対面で実施した。技術委員会はこの4年間取り組んできた『UNVT(国連ベクトルタイルツールキット』WGの研究成果を発表し、その後、3つの分科会(3D計測、3D設計、WebGISセミナー)に分かれて技術研修を実施したのである。この大会のキーワードは、測量・設計業における3D化とベクトルタイル、WebGISであり、UNVTの研究成果を加えると2024年度の飛躍的な活動内容が見えてくる。 UNVTとは、国連地理空間情報課に派遣された国土地理院の藤村英範氏が開発した国連ベクトルタイルツールキットで、国連のOpenGIS活動を代表する技術である。日本政府の「SDGsアクションプラン2021」や令和3年版国土交通省白書「地理空間情報によるパートナーシップ」にも掲載され、国内外でUNVT活用の機運が高まっている。既成のベクトル地図からベクトルタイルの生成とスタイルの定義、Webサーバーとして利活用可能なホスティング機能 最適化機能などを兼ね備えたツールキットで、ベクトルタイルを作成する各工程で利用するオープンソースのツールを選定し、利活用のための情報・環境を提供している。UNVTは、国土地理院の「地理院地図Vector」にも採用されてきた。 |
我々のNPO活動におけるUNVTの技術研究は、2021年度から始まり、2022年度には、ラズベリーパイ(Raspberry Pi)によるvectorタイル配信のWebサーバーの実装を行った。ラズベリーパイとは、ワンボードマイコンと呼ばれる安価な手のひらサイズのハードウェアで超小型で携行可能であり、災害現場でwindowsパソコンが被災した状態でも、現場で取得した被災情報などを地図情報として自治体職員のスマホに表示するホスティングサービスも実装することができる。地元企業が災害時だけでなく、平常時にも観光・教育・介護等、地域の現場とのリアルタイム地図情報サービスの安価な実装が可能になるともいえる。勿論、地方自治体でセキュリテイが重視されるからパソコンではなく、プログラム教育用に開発されたラズベリーパイで実装する場合には課題も多い。しかし、今まで、Windowsベースで開発をしてきた会員企業の技術者にとって、Linux系の技術は、将来必要になる。また、ラズベリーパイのプログラム言語はPythonが推奨されている。AIや、データサイエンス、3DGIS開発で、今、最も注目されているプログラム言語がPythonであり、Webアプリ開発では必須の開発言語でもある。UNVTを活用することにより、その周辺技術を学ぶことになり、測量士がハイレベルな地理空間情報技術者へと成長していくことも可能になる。Webアプリ、WebGIS開発にとって将来的に必要なこれらの技術習得は、2024年度以降の課題でもある。(図1,図2)
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2024年度の主な活動は、地理院地図のベクトルタイルに地方自治体が有するベクトル地図をUNVTでタイル化し追加することにより、LGWAN対応のクラウド環境のWindowsパソコンでPC-MappingとしてWebGISの実証実験を寒川町ですることである。地理院地図の令和5年度の予算でベースレジストリーの電子国土基本図の3次元化が決まり、いよいよ地理院地図ベクトルの3次元化が現実のものとなってきた。建物等の高さ情報が電子国土基本図に追加されるのである。3次元GISの活用に関する技術研究は、今年の最重要課題でもある。 |
「GIS NEXT 第86号 掲載記事より」