地方の測量設計業におけるリスキリングとスキルアップセミナー
NPO法人全国G空間情報技術研究会理事長 碓井照子
2022年度のスキルアップセミナーでは、例年、技術者を中心に実施している研修会を、今年は技術者だけでなく経営者・営業担当者を対象として実施した。第1回は、7月29日、第2回は、8月21日で、「測量設計業が今日取組むべき必須課題~BIM/CIMの活用(ライブ配信)」を前半と後半に分けて実施したのである。7月29日の第1回目には、日本測量調査技術協会事務局長の中島秀敏氏に「新しい測量時代の幕開け」を題目として基調講演をしていただいた。まさに今回のスキルアップセミナーの目標に則した素晴らしい内容であった。 我々NPOの主な目的は、G空間情報つまり地理空間情報に関する人材育成であるが、これからは、日本測量調査技術協会や日本測量協会と連携しながら、人材育成をしていく必要がある。 その背景には、急速に進むBIM/CIM/GIS技術の融合やインフラ分野のDXがあり、背景にi-Constructionがある。BIM/CIMモデルを理解しない限り、受注もできない時代が迫っているからである。国土地理院からも「i-Construction推進のための3次元数値地形図データ作成マニュアル」(2022年4月28日)が公開され、UAV写真測量による空中写真や、UAVレーザ測量による3次元点群データを用いて地図情報レベル500~1000の3次元図化が、今後我々地方の中小測量設計業でも主要業務になると予想される。 |
そのためには、技術者対応の写真測量技術資格をはじめ、地理情報標準認定資格、GIS技術資格の取得は、技術者にとって必須の技術要件である。しかし、それだけではなく、急激に変化するIT革命の中で、経営者、営業担当者にもリスキリング教育が必要と言える。 コロナ禍の中、リモートワークが急増し、労働形態も大きく変化しつつある。ITを活用した仕事は、通勤圏を考慮した会社選択という従来の雇用圏も変化させてしまう。地方の測量設計業にとっては、地方在住の通勤可能な労働者が雇用の前提であったが、その労働力存続基盤でさえ劇的に変化するであろう。いかにして測量設計業に魅力を持たせるのか。経営者にとっては、会社存続のためにも重要な課題といえよう。そのためには、測量設計業が地理空間情報業であることを経営者は認識し、そのためのIT教育を社内全員対象にして実施しなければならない。つまり、雇用するすべての労働者へのリスキリング教育が必要とされているのである。 リスキリング教育というとAIやCGやデータサイエンスなどが注目されがちであるが、我々のリスキリングは、まずは地理空間情報技術力の向上に注目すべきである。米国Amazon社は従業員10万人(一人当たり投資額は約75万円)をリスキリングすると発表し、非技術系人材を技術職に移行させるため、データマッピングスペシャリスト、データサイエンティストやビジネスアナリストなどの高度なスキルを持つ人材を育成するとしている。 |
ここでは、市場解析を行うためのGISを活用したデータ分析力を重視している。単にプログラミング能力の育成というのではなく、その業種に必要なIT技術力育成である。我々の業界では、UAV測量、BIM/CIM設計力、GISプログラミング、GIS空間解析技術などの身近な技術力である。特に、地理院地図を活用したWebGISプログラミングは、Web技術、サーバー技術も含むため、広くITスキルを養成することができる。 多くのリスキリングサービスでは、いつでも労働者が勉強できるオンライン教育が主流である。つまり、我々のNPOでも今までのような年数回形式のセミナー形式だけではなく、従業員がいつでもオンラインでリスキリングができる体制づくりを技術協力企業と相談しながら構築する必要がある。 |
「GIS NEXT 第81号 掲載記事より」