経営者・技術者向けBIM/CIM/GIS研修と技術者対応の国連UNVTを活用したWebGISのアプリケーション開発能力の育成  -2022年度NPO主催の研修-

経営者・技術者向けBIM/CIM/GIS研修と技術者対応の国連UNVTを活用したWebGISのアプリケーション開発能力の育成  -2022年度NPO主催の研修-

NPO法人全国G空間情報技術研究会理事長  碓井照子

                                       

   NPO法人全国G空間情報技術研究会は、令和4年度が会員全員のBIM/CIM/GISスキルアップの重要な年であると認識している。

   7月29日に開催されたZoomによる総会では、経営者・営業者向けのBIM/CIM/GIS研修と、技術者向けの国連UNVTを活用したWebGISアプリケーション開発の技術力向上を技術委員会の一つの課題とすることが承認された。

 令和2年に国土交通省が公表したBIM/CIM活用ロードマップ(図)では、令和5年に大・中規模工事におけるBIM/CIM適用が100%になる。小規模工事は除くということではあるが、実質的に令和5年までにはBIM/CIMの基礎的技術力を有していない場合、NPOの主要メンバーである工事測量を主とする地方の測量設計業者が営業存続の危機に直面することが危惧される。技術者はすでにBIM/CIM/GIS研修をここ数年実施してきた。しかし、経営者と営業担当者にも不可欠の知識になってきたのである。

 現在は、第4次産業革命の真っただ中である。BIM/CIM/GISが融合し、CADベースの2次元設計から3次元オブジェクトモデル作成へと設計スタイルが劇的に変化している。建設業におけるオブジェクトモデルの考え方を基礎から理解しない限り、何をしているのかが分からなくなる。幸いなことに測量業では、GISが早くから導入され、ISO/TC211による地理情報標準では一般地物モデル(General Feature Model)としてIT業界でオブジェクトプログラミングが主流になる頃からオブジェクト指向による地図作成の標準化が実施されてきた。国土の基盤である基盤地図情報は、オブジェクトモデルとして作成された「地理空間データ製品仕様書」を理解しない限り、地図作成業務はできないのである。

NPOの多くの測量設計業は、工事測量を主業とした地方の中小測量設計業者であるため、オブジェクト指向によるベクトル地図作成業務には慣れていないが、NPO発足時からGIS技術を育成してきたので、令和4年3月に公開された「3次元ベクトルデータ作成業務実施要領」に関しても迅速に対応ができると考えている。本年度の研修でも経営者・営業担当者向けに「i-Construction 推進のための3次元数値地形図データ作成マニュアル」(令和4年4月)と「BIM/CIM教育要領」(令和3年6月)をテキストに使用する予定である。

 デジタル庁で電子国土基本図がベースレジストリーに指定されたことは、電子国土基本図から作成されている地理院地図の活用が国・地方自治体で推進されることを示している。現在、WebMAPである地理院地図では、画像だけでなくベクトルデータの活用もでき、将来的には空間解析機能を有する地理院地図をベースにしたWebGISとしてのアプリケーション開発が主流になると考えられる。

多様なベクトル地図を重ね合わせて、GISの空間解析機能を有するWebGISベースのアプリケーション開発の技術力向上がNPO会員企業に求められる。地方自治体の様々なベクトル地図をタイル化し、重ね合わせて自治体職員や住民のニーズに見合ったWebベースのGISアプリケーション開発である。そのためには、ベクトルタイルを効率的に作成する必要があり、国土地理院の藤村英範氏が開発された国連UNVTを使いこなし、多様なベクトル地図をタイル化する必要がある。UNIXベースのUNVTを使用できる技術力が技術者には必要といえる。また、寒川町の地理院地図を活用したWebMAPをWebGISへと機能を高める必要もある。

    UAVによる点群測量とその活用に関しては、ここ2-3年で急速に増加している。我々のNPOでも多くの会員企業がその技術力を向上させた。さらに点群データを活用したアプリケーションの開発も進んでいる。

 

「GIS NEXT    第80号  掲載記事より」