建設DXが進む中、BIM/CIM/GIS融合時代における人材育成とは

建設DXが進む中、BIM/CIM/GIS融合時代における人材育成とは

―ベースレジストリーとしての電子国土基本図・地理院地図の重要性―

NPO法人全国G空間情報技術研究会理事長 碓井照子

 デジタル社会形成基本法(法律第35号)が2021年5月19日に公布された。この法律の目的は、現実空間とサイバー空間が高度に融合したデジタルツインにより、新たな価値を創出する人間中心の社会形成にある。法律第31条で「公的基礎情報データベースの定義や整備」について明示されている。 一般的には、ベースレジストリーといわれる国家の基盤情報であり情報検索のキー情報である。

 ベースレジストリーは、すぐに活用される区分①とおおよそ2025年を目途に緊急整備される区分➁の2種類に分類される。しかし、電子国土基本図は、区分①と区分➁の両方に列挙されているのである。電子国土基本図は、地理空間情報活用推進基本法(2007)で明示された位置の基準である基盤地図情報をベースに作成され、地理院地図としてWebMAPサービスを国民に無償で提供している。区分②の電子国土基本図は、まだ、その内容が定かではないが、家屋一棟単位、土地1筆単位までを地図検索できる番地・地番レベルの位置参照情報を有した電子国土基本図と思われる。現在の基盤地図情報には、街区・大字レベルの位置参照情報は整備されているが、番地・地番レベルの位置参照情報は整備されていない。地籍調査未整備地域の問題や地方税法による固定資産税電子地図の目的外使用の禁止、省庁の縦割り行政の弊害もあり整備されなかったのである。

 しかし、都市再生街区基本調査(2004~2006)により都市計画区域内に街区基準点を設置し、公図と街区の位置合わせが行われ、街区の中心点である街区の位置参照点が整備された。当時、基盤地図情報が都市計画区域2500レベル、それ以外が25000レベルで整備せざるをえなかった一つの要因とも考えられる。

 電子国土基本図が全国土2500レベル均一に、さらに500レベルへと進化すると考えられる。国・地方自治体の基盤地図として電子国土基本図が活用されることになり、その重要性はさらに増すことになる。

 一方で、地図は3次元化の方向であり、2次元の電子国土基本図は対応できるのかという声も聞かれる。しかし現在、航空・UAV測量では3次元点群データを計測しており、電子国土基本図の3次元化に関しては大きな技術的課題があるわけではない。

 国土交通省は、2021年4月1日、「インフラDX 総合推進室」を発足させ、インフラDX(建設DX)の全容を発表した。2023年までには、公共工事において小規模を除く、工事の測量から施工管理までBIM/CIMが適用され、3次元データが主流になる。3次元測量の基礎的データは点群データであり、GISやリモートセンシング技術ですぐ活用できるLASフォーマットが標準形式である。BIM/CIM/GIS融合の時代の到来といえる。

近い将来、建築物のBIM/CIMから3次元地図の建物などの地物更新も実施されると推測される。

 NPO全国G空間情報技術研究会では、BIM/CIM/GIS融合の時代の人材育成を重視し、点群データの3次元計測だけでなく、GIS等での利活用、さらに地理院地図Vectorのアプリケーション開発力に力を入れている。そのため、国土地理院の藤村英範氏が開発された国連ベクトルタイルツールキット(UNVT)の技術力をマスターし、オープンデータを活用して地域サービス向上に貢献できる地理空間情報技術力を育成する。

 

「GIS NEXT    第76号  掲載記事より」