災害時のドローン活用で津山市とNPO法人全国G空間情報技術研究会が災害協定締結

災害時のドローン活用で津山市とNPO法人全国G空間情報技術研究会が災害協定締結

NPO法人全国G空間情報技術研究会理事長 碓井照子

                                       

 今年の7月20日、津山市で「災害時における無人航空機(UAV)の活用に関する協定」を締結した。この調停式は、NHK岡山放送局で放映され、朝日新聞岡山版や山陽新聞にも掲載された。全員がマスク姿というコロナ禍での調印式は印象に残るものである。調停式では、ドローン撮影の実況映像もスクリーンに映し出された。災害放送用マイクや防水対応、RTKGPS塔載など9台のUAVを所有している津山市の地元企業「株式会社シディック」(土井良浩中四国G空間情報技術研究会支部長)のUAV操縦実演が放映されると会場にどよめきがおこり、津山市長の歓声の声に期待感の強さを感じたほどである。UAVによる迅速な被害状況把握は、災害時には必要不可欠のものといえる。

 協定では、災害時、市が必要と判断した場合、市が中四国G空間情報技術研究会の地元企業にドローンを使って被災地を上空から撮影するよう依頼し、市の災害対策本部でその映像をリアルタイムで見たうえで、人命救助や被害状況の把握に役立てるとしている。小規模な災害であれば、9機のドローンを保有する津山市内のシデック社が対応し、被害が大きい場合は中四国G空間情報技術研究会の会員企業が総力を挙げて支援するという内容である。UAVによる災害協定は、NPO会員の社会貢献活動の一つである。

 中四国G空間情報技術研究会は、今年で設立20周年を迎えた。測量+GIS技術で地域に貢献できる企業を目指してこの20年間地元で活動をしてきた。

 

その活動成果の一つが、津山市との 災害協定である。NPO法人全国G空間情報技術研究会は、津山市のケースを最初として会員企業の地元市町村との「UAVによる災害支援協定」締結を実現しようと計画している。そのため、「UAV航空測量」の資格付与に関する許可団体として航空局から本年5月に認定を受けた。UAV航空測量が、i-Constructionの推進において重視されている現在、NPOに所属する企業の多くの測量技術者がこの資格保有者になり、平常時から災害時までUAV航空測量がいつでもどこでもできる体制が当面の我々の目標でもある。

 i-Construction政策の中、UAVによる航空測量は、今や不可欠のものになっている。2017年には、「空中写真測量(無人航空機)を用いた出来形管理要領(土工編)(案)」が国土交通省から公表され、同年、国土地理院も

「UAV を用いた公共測量マニュアル(案)」を公開した。これをうけ、2018年には林野庁は、「スマート林業の実現に向けた取組について」の中で、UAVによる森林資源の計量化と森林GISクラウドの導入施策を推進している。スマート林業では、UAV写真測量とUAV・航空レーザー測量の2種類が、従来の地上測量から今後、森林測量の中核になると言及しているのである。

 これからの測量技術者には、i-Constructionへの対応だけでなく、スマート林業やスマート農業も含む多角的な地理空間情報技術の習得が必要とされ、そのためにはUAV航空測量+GIS+リモートセンシング+WebGISプログラミングの専門的な知識や技能を短期間で学べる環境が必要といえる。我々NPOの会員企業の測量技術者に、今、必要なのは、この4種類の地理空間情報技術の習得であり、コロナ禍の中、オンラインによる研修を充実させねばならない。

 

 

「GIS NEXT    第73号  掲載記事より」