神奈川県寒川町への支援活動

神奈川県寒川町への支援活動

NPO法人全国G空間情報技術研究会 専務理事 宮島四郎

                                       

 

私共の支援活動

 本年、NPO法人としての活動が16年目に入りました。私共の使命の一つに、自治体への支援活動があります。全国の支部から若手技術者を集めて、先端のICT技術を習得させて、地元自治体のシステム構築に協力する事業です。

2011年6月、当時寒川町で都市計画担当をされていた米山紀一氏より、新たな予算確保が難しいので、国土地理院が無償で公開している電子国土Webシステム(現地理院地図)で都市計画情報をネットで公開したいので協力して欲しいとの連絡が入りました。早速、私共若手技術者がシステム構築を行い、同年、11月1日より本稼働致しました。

e-マップさむかわ

 2013年には、国土地理院との包括協定を提案、7月3日に調印式を行っています。これで、土地条件や明治期の湿地範囲など地形情報を入手可能となりました。その後、地理院地図への移行時に、B級グルメや観光情報の他にリスク情報に該当する、土地の成り立ちや戦時中に毒ガスを製造していた海軍工廠跡地も加えて「e-マップさむかわ」に取り纏めて公開しました。この全庁的な取組が評価されて2014年、G空間EXPOの中で、国土地理院より電子国土賞「功績賞」を受賞しています。

スパイラルアップ更新

 地理院地図の背景地図は、5年毎に寒川町から提供される都市計画基図が使われています。寒川町の財務課では、毎年1月1日付けで、家屋調査を実施しています。この差分を国土地理院に提供

 

することでスパイラルアップを実現させる事が出来ます。この二つのデータベースを統一する作業を三ヵ年掛けて行い2019年、統合を完了しました。これで、寒川町から最新家屋情報と国土地理院が提供する各種道路の迅速更新を加えた最新地図が地理院地図で公開されることになりました。国が災害発生時に復旧・復興に地理院地図を使う、国土交通省統合災害情報システム(DiMAPS)に反映されています。

Geoアクティブコンテスト

 寒川町では、関東大震災時に100名近い犠牲者を出しました。それを後世に伝えるべく町内5ヵ所に記念碑が設置されていますが、その殆どは風化して、リスク情報としては伝承されていません。2019年6月、敢えて「e-マップさむかわ」に追加しました。この様な活動を広く知っていただく為「レジリエンスマップ」として同年のGeoアクティブコンテストに参加しました。拠点づくり部田端拠点づくり課長に就任された米山紀一氏がプレゼンテーターで、私共は3日間ブースに詰めて、説明をさせて貰いました。

 

結果と今後について

 残念ながら二度目の入賞は逸しましたが審査員の方々からは、自治体として素晴らしい取り組みと評価され、今後の町内への浸透と新たなリスク情報の公開に期待するとの感想があったと聞きました。「公助の限界、共助・自助の時代」と言われていますが、行政が持つ情報を分かり易く開示することで、災害時、自らの命を守る行動が出来ます。国土交通省では、内閣官房と連携して地方自治体が保有している都市計画基礎調査の情報をオープンデータとして、公開することを促進しています。土地と建物の利用状況特に、建物の用途、階数、耐火構造種別が記載されています。災害の被害想定に大いに役立つものです。G空間情報センターでは、一部自治体のデータを公開しています。

 

 

http://www.town.samukawa.kanagawa.jp/

https://www.npo-zgis.or.jp/system/files/users/46/1911/191101_688.pdf

https://www.mlit.go.jp/report/press/toshi07_hh_000134.html

https://www.geospatial.jp/

 

 

「GIS NEXT    第70号  掲載記事より」