セミナーレポート 全国縦断 地理空間情報活用促進セミナー 仙台会場(1月23日開催)

1月23日、NPO法人 全国GIS技術研究会は仙台サンプラザで「全国縦断 地理空間情報活用促進セミナー」を開催した。「事例から学ぶ、GISの活用方法」をテーマとし、東日本大震災後の復旧復興において活用されたGIS の活用事例を通してGISの理解を深め、今後の危機管理対応などに向けてより利活用されていくことを目的として開催されたセミナーをレポートする。

セミナープログラム
  • 政策講演
  • 基調講演
  • 事例紹介
  • 地域セミナーの紹介

 


政策講演 災害・防災における地理空間情報の役割 ──国土地理院 梶川昌三氏

国土地理院の梶川昌三氏は、まず平成24年3月27日に新たに策定された地理空間情報活用促進計画について解説した。従前の計画は平成20年に策定され、これまでの成果(平成20年策定の計画)と社会情勢の変化による課題を踏まえた内容となっている。次に、国土地理院の5つの役割として、国土地理院が東日本大震災(以降、震災後)の復旧復興にどのように関わってきたかを紹介した。梶川氏は、来るべき災害に備えて実施しておくべきこととして、「過去の災害の実態を明らかにすること」と「次の災害に備えること」をあげ、これらに関わる地理空間情報を整備しておくことで、発災時の対応にGISが活躍すると語った。


基調講演 東日本大震災においてGISが果たした役割 ──NPO法人全国GIS技術研究会 碓井照子 理事長

主催団体であるNPO法人全国GIS技術研究会の碓井照子理事長は、1.東日本大震災直後におけるGIS利活用からみえる社会の変化、2.東日本大震災における地方自治体のGIS利活用からの変化、3.まとめ、基盤地図情報の定着と更新について語った。まず、震災直後の社会的なGISの活用例を紹介した。その内容は復興支援、アーカイブと多岐にわたるという。次に震災後の地方自治体におけるGISの利用状況について発表した。震災後、2011年、2012年、2013年と3度にわたり沿岸部の被災自治体を訪ね、震災後の復旧復興におけるGISの活用状況について自身が調査してきた内容を紹介した。最後に近年のGISトレンドに関する情報提供としてGISとBIM(建設情報モデル)の融合について語り、基盤地図情報のスパイラルアップの考え方は建設情報とGISの融合であるとまとめた。


事例発表 東松島市における災害対応の課題 ──東松島市 五野井盛夫氏

長年にわたりGISを使いこなしてきたGISアナリストである五野井氏は、震災後の復旧復興活動においてもその豊富な経験を活かし、現場でGISをフルに活用してきた。まず、東松島市の被災状況を自らがGISで作成した数多くのデータで解説した。次に東松島市で整備していたGISデータと震災後に国土地理院から提供されたGISデータをどのように復旧復興へ向けて活用しているのか事例紹介した。最後に五野井氏は東松島市(もしくは自身)の課題として、1.日常業務と震災時に利用するGISの相違、2.緊急時だけでは利用できない、と2点についてあげた。


仙台市下水道GIS の活用事例 ──仙台市 小松孝輝氏

仙台市では、下水道事業アセットマネジメントを実現している。これをGIS活用の先進事例として小松氏が紹介した。まず、アセットマネジメントの必要性を唱え、仙台市ではGISをどのように活用してアセットマネジメントを実現しているか解説した。GISの空間解析機能を使ったリスクマネジメント、GISを用いた計画策定、維持管理情報の蓄積、災害対応とGISとして、防災訓練の実施状況(現地調査、データ入力、GISへの取り込み)について紹介した。まとめとして、アセットマネジメントにGISは不可欠、アセットマネジメントとGISに終わりはないと語った。


道路災害査定に係る新技術(MMS)の利活用 ──宮城県 小野寺正樹氏

震災後、宮城県東部土木事務所では災害査定対応としてMMS(Mobile Mapping System)を採用し、査定に臨んだ。小野寺氏はその経緯と効果について語った。まず始めに東部土木事務所管内の被災状況について解説し、続いて災害査定制度について、成り立ちから詳細に解説した。最後に、災害査定に臨んだMMSの概要を紹介した。災害査定をこなす中で東部土木事務所のMMSは2度の大きな機能追加を行い、最終的にはバージョン3となった。MMSを活用することにより、様々な制約がある中でも効率的に災害査定を行うことができたと語る小野寺氏は一方、課題として細かいクラックの状況を確認する際、拡大画像が粗いなど、車載カメラの解像度といったハード面の制約についても取りあげた。


有事に備えるGIS ──大阪府GIS 官民連絡協議会 一氏昭吉氏

GISの先進自治体である大阪府門真市における基盤地図情報の運用について自らが手がけた事例を取り上げ、基盤地図情報へのスパイラルアップが如何に重要かを解説した。まず一氏氏は、なぜ基盤地図情報を活用すべきなのかと解説した。続いて国・自治体の連携で効率的に整備更新する具体的な事例を紹介した後、基盤地図情報を軸にデータの相互活用事例を紹介した。最後に一氏氏は、1.基盤地図情報は地理空間情報作成のために集約された位置の基準、2.災害復興計画基本図と基盤地図情報の活用を、3.更新は国と自治体の連携で効率的に、4.復興に役立て・災害に備えるGISを、と締めくくった。


東北GIS技術研究会の災害対応事例 ──東北GIS技術研究会 阿部輝男

東北GIS技術研究会会員企業による災害対応事例について東北GIS技術研究会を代表して阿部が紹介した。震災直後の被災面積の算出事例、道路台帳の復元事例、道路路面災害へのMMS活用事例、航空レーザープロファイラの活用事例、下水道災害復旧調査におけるGISの活用事例、以上5つの事例について、当時の状況、採用の経緯、その効果について紹介した。

今後もNPO法人全国GIS技術研究会はセミナー実施などの活動を通してGISの普及促進のための継続的な活動を展開していくとして本セミナーは幕を閉じた。 以上、多くの事例発表はセミナー参加者にとっても有益なものであったのではないだろうか。